クローン病と診断されたら、色々なことを考えて不安になってしまう人がほとんどでしょう。
・クローン病とはどんな病気なのか
・どのような治療を進めていくことになるのか、そして完治はするのか
・食事に制限がかかると聞くがどの程度の制限になるのか
・治療を続けながら働くことが出来るのか、面接では言わない方がいいのか
このようなさまざまな不安に対して、クローン病歴10年の自分がひとつの解答を紹介していきます。
今後の闘病生活に向けて、その励みになる記事となっております。
また今後も本ブログではクローン病に関する情報を発信していく予定です。
クローン病とは
クローン病について、基本的な情報をネットで調べると以下のようなものがよく出てくると思います。
クローン病は炎症性腸疾患のひとつで、主に小腸や大腸などの消化管に炎症が起きることによりびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性の病気です。主な症状としては、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがあります。また、さまざまな合併症が発現することがあります。
クローン病は、厚生労働省から難病に指定されていますが、適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です
炎症性腸疾患について
私たちの体には免疫系という防御システムが備わっていて、ウイルスや細菌などの異物の存在を察知すると体内から追い出そうと活動します。このときに腫れや痛み、発熱などの反応が起こります。この反応のことを「炎症」と呼んでいます。炎症は体にとって不可欠なものですが、過剰に起こると体を傷つけることになります。炎症が消化管に起こる病気を総称して「炎症性腸疾患」といいます。
<中略>
1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院のブリル・バーナード・クローン医師らによって初めて報告されました。「クローン病」とは、この医師の名前から付けられた病名です。クローン病と似た病気で同じく非特異的炎症性腸疾患に属するものに、潰瘍性大腸炎があります。クローン病は口腔から肛門まで消化管のどの部位にも炎症が起こる可能性があるのに対して、潰瘍性大腸炎は炎症の部位が大腸に限局しているのが特徴です。
IBD life より引用
簡単に要約すると
・病名の由来は病気の発見者から
・免疫細胞が正常な細胞を攻撃してしまうことで起こるがその原因は不明
・口から肛門までの消化管のどこにでも起こりえる
・症状は腹痛・下痢・血便・発熱・肛門付近の痛みや腫れ・体重減少
・さまざまな合併症が発現する
・治療により症状の改善が見込め、普通の生活を送ることが可能
と、このような病気です。
原因は不明だが、ストレスが原因とされている
発症の直接の原因は不明。
ただストレスではないかとよく言われています。
何を隠そう自分自身、発症したタイミングというのは社会人1年目で精神的に大きなストレスを抱えていた時期でありました。
もちろんストレスを抱えている人が皆クローン病になるわけではありませんが、大きなストレスを長期間抱えている人はクローン病にならなくても何かしらの難病になることが多いです。
我々はたまたまそれがクローン病だったという風に自分は考えるようにしています。
完治はしない
現時点では根治治療法はなく、完治はしない病気です。
なので重要なのは症状を抑えること。
その為の治療を続けていく必要があります。
一方でクローン病の研究は日夜進んでおり、10年前にはなかった治療方法も今では保険適用されていたりします。
根治治療についても研究が進んでいるようなので、将来的に完治する病気になるかも知れません。
治療内容は大きく分けて3つ
治療内容は大きく分けて以下の3つです
薬物療法
薬を使った治療になりますが、この中でも薬の種類ごとに3つに分けられます
炎症抑制薬
恐らくクローン病と診断されたら誰もが処方されるであろう
ペンタサ錠がこれにあたります。
文字通り炎症を抑制するもので、内服薬となっております。
軽度の患者さんはこれだけでよくなる場合もあるようです。
症状が落ち着いてもこの薬の服用だけは続けることが推奨されています。
免疫抑制剤
こちらも内服薬で、
イムランと言われるものです。
免疫機能そのものを抑制して炎症を抑えるもので、その副作用も大きくなっています。
抗体製剤
炎症反応に関与する生体内物質(TNFα等)の働きを抗体によって抑えるという薬。
レミケードやヒュミラがこれに該当します。
レミケードは点滴、ヒュミラは皮下注射で投与します。
その他、ステラーラという比較的新しい薬もあります。
自分はレミケードしか使ったことありませんが、この抗体製剤はその効果が上記2種類に比べると劇的に大きく、多くのクローン病患者を助けてきたものとなっています。
しかし副作用も大きく、人によっては拒否反応が出ることもあります。
そこは主治医の判断で症状に合った適切な治療法をすすめてくださると思います。
ちなみに自分はこのレミケードとイムラン、ペンタサの服用を続けた結果
その関連性は確かではありませんが、悪性リンパ腫を発症しました。
その辺りはこちらの記事にまとめました。
【クローン病】レミケードを3年間使ったら悪性リンパ腫になった話
栄養療法
薬物療法と並行して実施していくのがこの”栄養療法”です。
クローン病は腸がやけどを起こして熱が出ているような状態です。
クローン病患者さんのための栄養療法ってなんだろう?より
そんな時には、腸を休ませて、しっかりと栄養を摂ることが必要です。
腸を休ませながら栄養を摂るためには、食事を控え、既に消化分解されている栄養剤を使います。腸を休ませるだけでも、クローン病の症状は改善することが報告されています。
簡単に言うと食事を制限してその分を栄養剤で補うことで腸をはじめとした消化器官を休ませて症状を改善させることを目的としています。
その他の治療
上記2つで症状が改善しない場合に実施される治療法。
・外科手術
⇒病変の摘出など
・血球成分吸着除去療法
⇒血液から炎症を起こしている成分を取り除く
・内視鏡バルーン拡張術
⇒狭くなった腸管を内視鏡に取り付けたバルーンを膨らませることで広げる
この病気と付き合っていくうえで重要なのが栄養療法
症状が出ている状態を燃焼、または再燃
症状が出ていない状態を寛解と言います。
前述したようにクローン病は完治しないので、薬物療法などで寛解状態になった後はいかに寛解を維持していけるかが大事になっていきます。
その為に重要なのがこの栄養療法です。
栄養療法とは前述したように食事を制限して、その分を既に分解されている栄養剤で補うというものです。
まずは食事制限について簡単に紹介します。
3+1種に該当するものは食さないようにする
クローン病において避けるべき食事といわれるものは以下の3種に該当するものです。
食生活は、寛解を維持したいなら”発症前と全く同じ”という訳にはいきません。
刺激物
アルコール・炭酸飲料・カフェイン・香辛料
これは自分の体感ですが、食べ物より飲み物の方が直で影響が出やすいです。
なのでコーヒーや酒類は基本的に摂取しません。
脂質が多いもの
クローン病の食事制限で一番大変なのがこれ。
食の欧米化が進んでいると言われていますが、欧米食はそのほとんどが多くの脂質を含んでいます。
揚げ物はもちろん、食材そのものが脂質を多く含んでいるものばかりです。
その目安について、自分は主治医に1日30g程度と言われています。
参考までに各食材100kg辺りの脂質を記載します。
牛肉サーロインは47.6g
豚肉ばらは30.6g
鶏肉ももは14.6g
鰻は21.4g
鯖は16.6g
秋刀魚は16.2g
フライドポテトは10.7g
消化しにくいもの
きのこやナッツ類、その他にも食物繊維が豊富なものがこれに該当
たばこ
食事ではないですが、喫煙は悪影響を及ぼすことが分かっています。
栄養剤について
栄養剤として、現在クローン病治療で一般的に使用されているのがエレンタールというものです。
本ページでは栄養剤=エレンタールとして紹介を進めていきます。
エレンタールは消化が不要
エレンタールは消化が不要です。
その為消化器官に負担を全くかけることなく栄養を摂取することが出来ます。
経口投与以外に経管栄養という方法もある
普通に口から飲む経口投与もありますが、一度に多くを飲むと下痢になりやすいといわれているので経管栄養という方法もあります。
エレンタールにおける経管栄養は、鼻から専用のチューブを胃・十二指腸まで入れて一晩かけて流し込むというものです。
自分はこの経管栄養はやったことないので分かりませんが、経口投与である程度多めに一気に飲むと便意をもよおしやすいです。ちなみにこれで下痢になったことはありません。
味や匂いは大変厳しいが、飲みやすいようにフレーバーが多く用意されている
粉末状になっている本品を水に薄めて飲む方法が一般的ですが、
その味や匂いはお世辞にも食欲が沸くようなものではなく、それ単体を大量に飲むのは非常に辛いです。
しかしそこはきちんと患者さんが飲みやすいようにフレーバーが用意されているので、規定の量のフレーバーを入れることでまぁゴクゴク飲むことに抵抗がなくなる程度までは改善します。
ちなみにフレーバーには以下のようなラインナップがあります。
・パイナップル味
・青りんご味
・コーヒー味
・グレープフルーツ味
・ヨーグルト味
・フルーツトマト味
・さっぱり梅味
・マンゴー味
・コンソメ味
自分もいくつか試したことはありますが、結局青りんご味に落ち着いています。
各フレーバーは薬局に頼めば出してくれますが、コンソメ味やさっぱり梅味などは新しめのものなのでなかなか薬局に置いてないことが多いです。
食事制限と栄養剤運用のバランスが重要
食事制限が大きくかかる上になんだかよく分からない栄養剤を飲まないといけないなんて・・・・
と思うかも知れませんが、そうではありません。
栄養剤を投与の意義とは下記の2点にあります。
・食事で消化器官に負担をかけた分栄養剤で帳尻を合わせる
これも主治医から言われたのですが、
食事制限だけですべてをやろうとするとものすごい制限を厳しくしないといけないが、一部食事を栄養剤に置き換えることで、普通の食事の制限を多少程度緩めても寛解の維持は出来るとのこと
もちろん症状には個人差がありますし、自分も調子が悪い時は絶食して毎食栄養剤にしていた時期はありました。
しかし、症状が落ち着いてきて、それをしばらく維持できている場合は主治医と相談して食事の制限をある程度緩和することは可能です。
なのでこの病気にかかったら一生あらゆるものが食べられなくなるわけではありません。
例えば自分の場合は平日の昼食を抜いて代わりに栄養剤をとり、
朝と晩は低脂質、低残滓のメニューの食事。そしてたまーに高脂質な揚げ物や肉類を摂取することはあります。
それでも10年近く寛解を維持できています。
この辺りは以下の記事に詳しく書きました。
【クローン病】寛解を10年維持している僕がやっている3つのこと
ただ繰り返すようにこれには個人差もあり、すべての人がこの方法で大丈夫とは言えません。一人ひとりにあった栄養療法というものがあります。
そこはよくよく主治医と相談する必要があります。
治療を続けながら働くことは出来るのか
寛解状態を維持出来ているのであれば働くことは可能です。
普通の人と大差なく働けます。
ただし、ある程度周りの人の理解は必要です。
人によってはトイレが近くなったりすることもありますし、他の人と同じ食事をとることが難しい場合もあります。
そのような時、周りが病気のことを理解してくれていると働きやすくなるのは事実です。
病気を持ちながら働いている人はクローン病に限らず少なくありません。
その中でも特にクローン病が大変で働けない、ということは全くありません。
働く上で苦労したことは
前述したように自分は昼食を抜いて代わりに栄養剤を飲んでいます。
しかしこれだとどうしても栄養が足りず、15時くらいになるとフラフラしてきて仕事に支障が出ていたことがありました。
解決策として、通常飲む分の1.5倍の量(エレンタール3袋分)を持参して15時くらいに飲んでいくようにしました。
この時間に会議などがぶつかる時はその前後に上手く飲んでなんとか凌いでいます。
自分が仕事で苦労したことと言えばせいぜいこのくらいです。
就職活動において、面接では言わない方がいいか
これは色々意見があると思いますが、自分は言っておいた方がよいと思います。
理由はふたつ
ひとつは、入社後必ず病気のことは会社に伝えて理解を得ることが必要になるから。
普段からトイレが近い理由を会社側が理解してくれているのといないのとでは本人へのストレスが大きく違います。
他にも通院で定期的に有休をとることになりますし、悪化して急な入院となり長期的に出勤できなくなる可能性もあります。
そんな時、実は前から持病がありましたというのはあまりにも印象が悪いです。
そしてふたつ目
クローン病の持病があるということで落とされるような会社には、間違ってでも入らなくて正解だ、と思います。
面接というのは会社側がこちらを判断する機会であるのと同時に
こちらも入社して本当に大丈夫か、社員のことを大事にする会社なのか、ということを判断する機会でもあります。
クローン病であるというだけで落とされる会社に、それを隠して入社したとしても今後もっと辛い目に会うことが目に見えているからです。
誤解を恐れずに言うなら、それほど恐れる病気ではない
クローン病はそれほど恐ろしい病気ではありません。
根治療法こそありませんが、症状を抑制するための薬やその手段はいくつも存在し、その症例も多く存在します。
寛解維持の為に必要な方法も探せばいくつも出てきます。
もちろん重症化する人もいますし、合併症のリスクもありますが、それは他の病気と比べて特にリスクが高いという訳ではありません。
大事なのはこの病気とこの病気になった自分に向き合い、これまでと同じとはいかない生活を受け入れることです。
それさえ出来れば、本当に大した病気ではないと自分は思います。
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