おいしいコーヒーのいれ方シリーズの新刊が2020年6月に発売されます。
前巻から実に7年ぶりの新刊になり、加えてこれがおいしいコーヒーのいれ方シリーズの最終巻であるとのこと。
このシリーズは直木賞作家の村山由佳先生によるライトノベルの長期シリーズで、ジャンルは恋愛小説。
第1巻の「キスまでの距離」が発売されたのがなんと1994年なので26年間続いたシリーズということになります。
今回はそんなシリーズがついに完結するということで、”おいしいコーヒーの入れ方”シリーズとこの最終巻の紹介をネタバレしない範囲でさせていただきます。
ちなみにネタバレはあってもいいから手っ取り早くラストを知りたいという方は以下の記事をどうぞ
「おいしいコーヒーの入れ方」とは
前述したように、直木賞作家の村山由佳先生がデビュー当時から書かれている恋愛小説のロングランシリーズ。
文庫版と新書版がありますが、ライトノベル故に新書版(正式にはJUMP j BOOKS版)には素敵な挿絵があり、活字慣れしていない世代にとってもとても入りやすいものになっております。
大まかなあらすじ
物語は主人公の「勝利」が父親の転勤の為に「かれん」と「丈」の2人の従姉と同居するところから始まります。
高校3年になる春、父の転勤のため、従姉と同居するはめになった勝利。そんな彼を驚かせたのは、久しぶりに会う5歳年上のかれんの美しい変貌ぶりだった。しかも彼女は、彼の高校の新任美術教師。同じ屋根の下で暮らすうち、勝利はかれんの秘密を知り、その哀しい想いに気づいてしまう。守ってあげたい! いつしか一人の女性としてかれんを意識しはじめる勝利。ピュアで真摯な恋の行方は…。
おいしいコーヒーのいれ方Ⅰ「キスまでの距離」 より引用
基本的に主人公「勝利」の視点で、彼のモノローグを交えながら進んでいきます。
少しずつ進展する「かれん」との関係や、様々な人物との出会い、そして巻き起こる様々な事件を得て二人は成長していきます。
シリーズはこれまでに18作発売中
前述したように「おいしいコーヒーの入れ方」は26年間続くシリーズです。
26年の間に18作品が発売中で、2020年6月に最終巻が発売されて全19作品となります。
そのうち、11作目以降が”Second Season”となっております。
これまでのあらすじをもう少し詳しく
最終巻を迎えるにあたって、これまでの18巻を読み返すのが大変という方のためにこれまでのあらすじを詳しくまとめました。
こちらは特に最終巻直前の話をより深く掘り下げておりますので、これを読めば最終巻に今からでも追いつけるような記事になっております。
Ⅰ「キスまでの距離」~ Ⅴ「緑の午後」
Ⅰ~Ⅴまでは主人公「勝利」と従姉の「かれん」「丈」の3人での同居生活を中心に物語が進んでいきます。
初期の村山作品らしく非常に胸キュンシーンの連続です。(いわゆる”白村山”作品です)
でもどこかリアルで、若い頃の恋愛ってこういうものだったなぁと、あるいは大人になったらこんな恋愛するのかなぁと思いながら読んだりしました。
そして巻数が進むにつれてほんとうに少しずつながら進展していく2人の関係。
Ⅴ「緑の午後」では3人での同居生活にも終わりが見え始め、これから大きく物語が動く予感を漂わせたところで終わります。
ちなみに自分はⅤを後述するラジオドラマで聞いたことがこのシリーズとの出会いでした。
Ⅵ「遠い背中」~ Ⅹ「夢のあとさき」
「変わっていくことを恐れてはいけない、僕たちの為にも」
長く続いた同居生活も終わりを告げ、「勝利」も「かれん」も大きな決断をします。
勝利へ思いをよせる「星野りつ子」の存在も相まって、内容は少しずつヘビーに。
Ⅸ「聞きたい言葉」やⅩ「夢のあとさき」にかけて2人が衝突するシーンが増えてきて、これが非常に生々しく描かれています。
Ⅹでは遠距離恋愛が始まるなど様々な問題が2人を襲いますが、どうにかこうにか乗り越えて第1シーズンは完結を迎えます。
Second Season Ⅰ「蜂蜜色の瞳」~ Ⅳ「凍える月」
いつのまに、彼女はここまで凜と綺麗になったんだろう。
Ⅹで完結を迎えたと思いきや、しれっと始まったSecond Season。
このSecond Seasonの前半は大きなや問題はそれほど起こらず、一見平穏なシーンが続きます。
“2人の関係”も少しずつ進んでは行きますが、それよりも”2人以外の登場人物の深掘り”が強く印象に残ります。
時には他所の家庭の問題に「勝利」が巻き込まれたり・・・
一見平穏と思われたシーンの裏で、実はやがて起こるあのシーンとその後の急展開に向けての準備が着々と進められていたことにおそらく誰もが気づけないまま「凍える月」のラストシーン前を読み終えるでしょう。
そして「凍える月」のラストで絶望的な事件が起こってしまう・・・・
Second Season Ⅴ「雲の果て」~ Ⅷ「地図のない旅」
Ⅳ「凍える月」の最後に起こった事件(というより事故)により物語は急展開を迎え、「勝利」はオーストラリアに飛びます。
Ⅴ「雲の果て」、Ⅵ「彼方の声」は勝利が一人海の向こうで奮闘する物語が進み、
Ⅶ「記憶の海」、Ⅷ「地図のない旅」は「勝利」がいない間の日本での物語が「丈」を初めとした様々な登場人物の語りで紡がれていきます。
その間、「勝利」と「かれん」の接点はほとんどなし。
そしてⅧ「地図のない旅」のラストで帰国した二人は再開を果たし、続きの最終巻が7年ぶりに発売されるということで今に至ります。
この展開は正直当初は自分もなかなかついていけず、今に至るまでほとんど読み返せませんでした。
でも今読み返してみると、登場人物一人ひとりがこの事件に少しずつ向き合っていく様が非常に丁寧にリアルに描かれており、気づくと物語の中にどんどん引き込まれてしまいます。
表紙イラストを「結布」さんによる描き下ろしで刷新!
ちなみにこのおいコーは素敵な表紙と挿絵のイラストも魅力の一つですが、
イラストレーターはSecondSeasonⅢ「消せない告白」以降、志田光郷さんから結布さんに変わっているという経緯があります。
そしてこの完結記念に文庫版の表紙が刷新され再販されております。
これを期にチェックしてみるのもよいと思います。
新イラストの文庫表紙、どれもかなり素敵です。
FirstSeasonのみはこちら↓
全巻(最新刊含む)セット↓
元々は単発の作品だった
26年間続いたシリーズながら、実は掲載当初は単発の物語であったというのは有名な話です。
「ジャンプノベル」にⅠ「キスまでの距離」のさらに前半のエピソードが掲載されたのがこのシリーズのはじまりでした。
本来はここまでで完結されていた筈だったこの物語はしかし、非常に多くの反響を呼び、結果その声に答える形でシリーズ化。それが26年間も続くことになったとのこと。
大タイトル「おいしいコーヒーの入れ方」の意味
その由来はおそらく前述したⅠ「キスまでの距離」の前半のエピソード。
「かれん」の実兄であり、”とびきりうまいコーヒー”を入れる喫茶店のマスターに認められ、「勝利」はこのコーヒーの入れ方を伝授してもらいます。
このエピソードがそれから続く長い長い物語の原点になっております。
その後シリーズ作品は18巻まで続きますが、その間常に登場するわけではないものの、この「マスター」や「勝利」がいれる”コーヒー”が物語の要所要所で非常に重要な役割を果たし続けます。
そして最新刊でももちろんこの”コーヒー”は重要な役割を果たすとか果たさないとか
累計545万部を売り上げる人気シリーズ
普段は本をあまり読まない若い世代からも支持されているこのシリーズは、
累計545万部を売り上げる人気シリーズになっています。
10万部でベストセラーとされる出版業界において、この数値は決して少なくないものになっています。
その理由はライトノベルというジャンルだけあって読みやすい文体。そしてこれ加えて主人公の「勝利」が非常に等身大。
そして彼のモノローグは非常に読みやすく物語にとても入り込みやすい。そして彼自身に感情移入がとてもしやすいものになっています。
序盤はとにかく胸キュンシーン連発で、青春時代の恋愛ってこうだった!と思うような展開が続きます。
これが終盤になると、恋愛ばかりに悩んでいられない状態になってきます。
命や生と死のような重い問題を乗り越えて「勝利」は成長していきます。それも長い長い時間をかけて
こんな小説他にありません。
ラジオドラマ化やコミカライズ
本シリーズは様々なメディア展開されています。
コンピレーションCD発売
この”おいしいコーヒーのいれ方”は各エピソードごと洋楽のタイトルがついており、この曲がそれぞれそのエピソード全体をするものになっていたり、シーンのBGMとして登場したりします。
そんな”おいコー”で使用された曲を集めたコンピレーションアルバムが発売されております。
“おいコー”ファンならチェックしてみてもよいかと思います。
自分も発売当初に購入済みで、どの曲も名曲揃いでオススメです。
(ただ、大人の事情でいれられなかったあの曲やこの曲があるのが少し残念)
NHK-FMでラジオドラマ化されている
前述したように自分がこのシリーズと出会ったのがこれでした。
NHK-FMの「青春アドベンチャー」というラジオドラマ番組で
Ⅰ「キスまでの距離」~Ⅹ「夢のあとさき」がすべてラジオドラマ化
これが完成度が非常に高く、物語の世界観にググっと引き込まれました。
1冊あたり15分×5話(ⅤとⅥのみ10話)構成で、1994年から2006年の間に不定期で放送されていました。
このラジオドラマという媒体はこの作品ととてもマッチしていると思いました。
・このシリーズの味である”主人公「勝利」のモノローグ”が本当にそのままドラマ化
・各エピソードごとについている洋楽がBGMとして流れるシーンがあり、作者が描きたかった情景がより具体的な形になった
・キャストはプロの声優さんというより演劇畑の俳優さんがほとんどで、その声の演技がリアル
ちなみにこのラジオドラマ、正式にCD化などはされておりませんがyoutubeなどで探せば挙がっているようです。
2度に渡りコミカライズ、現在「少年ジャンプ+」で連載中
2001年に一度コミカライズされていますが、
2019年10月から再びコミカライズされており、少年ジャンプ+で連載中
現在単行本2巻まで発売中です。
「ショーリ」と「かれん」は26年間を得てどのような結末を迎えるのか
長く続いたシリーズなので、完結というのは多くの読者にとって待ちわびたものであり、同時に”終わらないで欲しい”という思いもあるかと思います。
主人公の「勝利」と「かれん」は、前述したSecond Season Ⅳ「凍える月」の最後に起こった事件により、どう持って行っても両手放しでのハッピーエンドというのは難しい状況になってしまっています。
とても大きな試練を与えられた彼らが必死にもがいて掴み取る結末は一体どのようなものになるのか、
「ショーリ」と「かれん」は26年間を得て果たしてどのような結末を迎えるのか、
Second Season Ⅳ「ありふれた祈り」は文庫版 JUMP j BOOKS版共に現在大好評発売中です。
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