おいしいコーヒーのいれ方

漫画版 おいしいコーヒーの入れ方シリーズはどうなのか?原作ファンによるレビュー

おいコー漫画レビュー おいしいコーヒーのいれ方

村山由佳先生の恋愛小説「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズが漫画化され発売され、2021年2月現在、6巻まで発売中です。

小説を漫画にすると、どうしても陳腐になってしまうケースが多い。
特に恋愛小説という、心情描写が多いものをコミカライズすることは中々うまくいかない場合が多いです。

ということで、今回は原作ファンの視点から見たこの漫画版おいコーをレビューしていきます。

「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズとは

おいしいコーヒーのいれ方シリーズとは、直木賞作家の村山由佳先生による初期から続く恋愛小説のシリーズで、ジャンルは恋愛小説。

第1巻の「キスまでの距離」が発売されたのがなんと1994年で、2021年に最終巻が出るまで26年間全19巻出てるシリーズです。
今回は25周年記念の際にコミカライズされました(実はコミカライズ自体は2度目ですが)

おいしいコーヒーのいれ方シリーズについては以下にまとめてあります。

注意!表紙と本文の絵が違う。表紙は原作の表紙と挿絵を描かれている結布さんだが、本文の作画は青沼裕貴さんという方

まず本作の表紙について、 表紙は原作の表紙や挿絵を担当している結布さん。一方で中の作画は青沼裕貴という方になります。

よく表紙目当てで買ったけど中は絵が全然違う、なんて聞きます。
本作の場合そもそも書いている人が違うという、人によっては詐欺みたいなもんだと言われかねない構成です。

ここは原作ファンの中でも評判があまりよくないところです。

原作の表紙と挿絵を担当して下っている結布さんが参加してくださっているというのは無茶苦茶いいとは思うのですが、 一方で、表紙と中の絵が違うというのは混乱を招きます。 表紙は青沼さんが担当してもよかったんじゃないかといまだに思います。

ちなみに結布さんは表紙に加えて、話の間にイラストを1枚描いて下さっております。 これがめちゃくちゃいいです。

原作ファンから見たコミックスの感想

ではここからは実際に読んで感じたことをまとめていきます。

本記事ではとりあえず原作で1作目にあたる「キスまでの距離」に該当する1巻から3巻に絞ってレビューしていきたいと思います。

モノローグまでしっかりと再現

本作に限らず村山先生の小説は、語り手となる主人公のモノローグ、いわゆる心の声が非常に丁寧で繊細。 あらすじには乗らないこれらモノローグに引き込まれたものでした。

漫画というと、どうしても絵が先行します。 原作にあった情景描写の部分は絵で補えるとしても、モノローグをはじめとした心情描写を省き、あらすじとセリフだけをまとめたようなコミカライズになっているようなら今回のコミカライズは失敗だろうと思いっておりました。

結果、これはいい意味で裏切られました。

モノローグ部分その多くがそのまま残され、コミカライズにあたり決して字が並ぶだけにならないよう非常に上手く描かれておりました。
主人公の勝利がヒロインかれんに心惹かれていく最序盤や、永遠の恋敵 中沢氏の登場に動揺し、嫉妬に心揺さぶられるシーンなどはもちろん原作を忠実に再現されていました。

個人的に気に入っているのがこの嫉妬のシーン。
原作では中世のヨーロッパでは女性に「貞操帯」なるものをつけて留守の間の不貞を防いだことをあげ、そんな気持ちもほんの少しは分かると思うほど嫉妬に駆られていると思案するのだが、 漫画版ではこのシーンを勝利の妄想という形でちょっとえっちなシーンに仕上がっており、もちろん思案の内容は原作を可能な限り再現しながらも今の時代に配慮したと思われる言い回しも追加されており、勝利の葛藤も伝わりながらそれをうまくコミカルに表現されていてよかったです。

ちなみにこのシーンは2巻に当たります。

絵はシンプルで物語を邪魔しない

絵は正直無茶苦茶うまいというほどではありません。
あえてなのか、タッチはツルツルで男性陣は特に薄い顔が多いです。
一方でヒロインかれんを初めとした女性陣については、どうしても表紙の結布さんのと比べてしまいますが、それでも正直そこまで違和感はなく、イメージ通りといっても差し支えないです。
加えて、背景などは非常に美しい。というよりタッチが優しくて本作の雰囲気に合っていると感じました。 風見鶏の店内なんかは長年イメージしていた通りだったので本当に驚きました。

そして何気にフルカラー 全編フルカラー。
何故フルカラーなのかはさっぱりですが、いいですフルカラー。多少本体価格が高くてもこれなら許せます。
ちなみに本体価格はどちらも税込みで
電子書籍版が \935
紙版が \889

原作へのリスペクトを感じる

総じて感じるのは、制作側の原作へのリスペクト 2次制作作品には、あらすじと絵だけ揃えて形だけ整えましたみたいなものも少なくありませんが、このような作品に共通するのは原作へのリスペクトを感じないという点。

一方で本作については、細かい表現や言い回しを大事に再現している。 原作にはあったあのシーンがない!というのがほとんどない(いゃ、実際にはあるのかも知れませんがぱっと思い当たりません)

原作ファンから見ても気持ちよく読めるものに仕上がっている

コミカライズということで不安はありました。 原作を追った者としてどうしても想像補っていたところをきめられてしまうという点もありますし、前述したようにリスペクトがない仕上がりだった場合は返って作品の評判も落としかねないとまで思いました。

しかし、実際には総じて原作ファンから見ても気持ちよく読めるものに仕上がっておりました。

原作の一作目である「キスまでの距離」の文庫版あとがきにて、原作者の村山先生はこのような言葉を残しております。

映画にも漫画にも、テレビやパソコンのゲームにも、それぞれにしかない面白さがもちろんあります。 今の若い人たちが、本よりもそちらに夢中になるのはあたり前のことかも知れません。 でも、この世には活字でしか、いえ、小説でしか味わうことの出来ない種ツイート感動と面白さが、存在するのだということ・・・・そのことを、私は、若い人たちにも伝えていきたいのです。できれば私の小説によって

「キスまでの距離」 文庫版のあとがきより引用

漫画には漫画のいいところがあるように、小説には小説のいいところがあります。 今回は漫画化にあたり漫画にいいところが存分に発揮された一方で、小説のいいところ、原作の面白いところは溢れてしまったところもあります。

原作ファンから見て十分面白く出来上がっているからこそ、漫画から入った読者には原作も覗いて見て欲しいと思います。 きっと新たな発見があることでしょう。

原作版です。漫画版でいうと3巻までの内容が入って\506です。

現在Kindle版なら1巻だけ無料で見れる

AmazonのKindle版であれば2021年2月現在なら1巻だけ無料で読めます。

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